【いわて】県名の由来を深掘り:鬼の手形

東北古代史

はじめに

趣味レベルではあるのですが、東北古代史に興味があります。自宅奥でホコリを被っていた古くて分厚い市史を読んだり、近所の博物館/埋蔵文化財センター/郷土歴史館などに出掛けたり、地元新聞社の刊行物をメルカリで買ったりしながら、いつも楽しくあれこれ考えています。元々、初めて会う人の苗字や見聞きする住所の地名などが気になるタイプではありましたが、その流れなのだと思います。【いわて】の県名の由来を深掘りすることにチャレンジしてみたいと思います。

わざと「深掘り」としているのですが、基本的には「通説」をまとめる内容になります。県民なら誰でも知っているお話があるのですが、逆にこのお話しか知らないと思います。私もそうでした。ただ、私が気になったのは、このお話の最後にさらっと書いてある「諸説あり」の文言です。少し調べてみると、こんな説もあったのか、と。そんな驚きがありました。

あと、東北古代史を趣味で調べているうちに、おや?、これが【いわて】の由来では?という新説?も出てきたのです。ひらめきレベルですが、まとめたいと思います。それでは、まずは通説から。

伝説:鬼の手形

岩手県民であれば子供からお年寄りまで誰もが知っているお話です。

県の広聴広報課ホームページから引用します。

岩手の名のおこり

盛岡市三ツ割の東顕寺(とうけんじ)に注連縄(しめなわ)が張られた三つの大石があります。この石は、岩手山が噴火したときにとんできた石といわれ「三ツ石様」と呼ばれて人々の信仰を集めていました。

この頃、羅刹鬼(らせつき)という鬼が里人や旅人に悪さをするので、困りはてた里人は「三ツ石さま」に「どうか悪い鬼をこらしめてください」とお願いしたところ、たちまち三ツ石の神様が羅刹鬼を三つの大石に縛りつけてしまいました。

ビックリ仰天した羅刹鬼は「もう二度と悪さはしません。二度とこの里にも姿を見せませんからどうぞお許しください」というので、三ツ石の神様は「二度と悪さをしないというシルシをたてるなら」といわれました。

そこで、羅刹鬼は三ツ石にペタンペタンと手形を押して南昌山の彼方に逃げ去ったといいます。いまも、雨上がりの日など「鬼の手形」らしきものが石の上に見えるといいます。

https://www.pref.iwate.jp/kensei/profile/1000647.html

考察:岩手山の噴火で飛んできた?

私も三ツ石神社にあるこの大きな石を見たことがあります。鬼の手形はよくわかりませんでしたが、不思議な大石でした。この伝説は非常に有名、かつ岩手にとっても重要なお話のため、県民の無意識的なアイデンティティ、ナショナリズムにつながっているような気さえします。枝葉の逸話がいくつかあるのです。さんさ踊り不来方三ツ割という地名など。それはさておき、この大石は花崗岩です。そのため、岩手山の噴火で飛んできた、というのは誤りとなります。ずっと昔からそこにあった、もしくは運んできた?、というのが正しいようです。

GSJ 地質ニュース Vol.11 No.1|出版物とサービス|産総研 地質調査総合センター / Geological Survey of Japan, AIST
2011年3月までの地質ニュース、2011年12月までの GSJ ニュースレターを継承する GSJ の新しい広報誌として「GSJ 地質ニュース」が創刊されました。

考察:羅刹鬼は何をしたのか?

次に、羅刹鬼は住民に何をやらかしたのか?いや、羅刹鬼とは誰だったのか?悪いことをした実在の人物か、妖怪か、はたまた疫病や天災、飢饉のような出来事なのか?羅刹鬼とはなんぞや。調べてみたところ、時代と場所をかえ、さまざまの模様です。

  • 人を喰う鬼の総称
  • 古代インド神話の悪神
  • 毘沙門天に仕える、人の煩悩を食い尽くす善神(仏教)
  • カレンダーによくある六曜の赤口に関連する神(陰陽道)
  • 平安末期の「今昔物語集」に登場する鬼
善神・悪神両方の逸話が残る「羅刹鬼」の不思議 | 歴史人
羅刹鬼とは、人を食らう恐ろしい鬼である。ただし、人前に現れるときは、男を惑わせる妖艶な美女であることが多いという。これは悪女の典型というべきだろう。いったい、どのように男たちを悩ませたのだろうか?

とくに今昔物語集の12巻第28話では、身長約3mの巨人として登場しています。

・・・ 肝砕け心迷て見れば、長は一丈許の者の、目口より火を出して電光の如くして、・・・

https://yatanavi.org/text/k_konjaku/k_konjaku12-28

平安時代当時、流行していたのでしょうか。怖ろしいものの総称として鬼、羅刹鬼という存在が語られていたのでしょうか。そんなことしてたら鬼がくるぞ!とおばあちゃんに言われていたのでしょうか。こちらが元ネタのようにも思われます。

岩手山の火山活動や飢饉との関りも気になるのですが。

考察:南昌山の向こうには何がある?

そんな羅刹鬼が逃げ去ったのは、南昌山の向こうです。三ツ石神社から見て南昌山の向こう側に何があるのか地図を眺めると、花巻の奥の温泉地、沢内、西和賀。そちらに鬼の伝承はあるのでしょうか。情報収集中です。岩手県北上市の鬼は有名ですね。鬼剣舞です。秋田県にはなまはげがいますね。ルーツは大陸でしょうか。

「もう二度と悪さはしない」と誓って逃げ去ったので、良い鬼となっている可能性も大きいです。

まとめ

まだまだ興味は尽きません。今後あらゆる場面で情報を収集していきたいと思います。いったんまとめます。

「岩手」の県名は、平安時代、中央の律令制の奥六郡として最後に登場する郡名「岩手」をもとにしているのは確かなはずです。当時の岩手郡は、南に接するのが斯波郡、北は八幡平のあたりまでと非常に広域です。この広い郡の名称をこの「鬼の手形」の伝承から命名するでしょうか。このようなお話は当時もっともっとたくさんあったはずです。シンプルでわかりやすくよいお話だと思いますが、決め手に欠けるような印象を持っています。

鬼の手形の伝承については当時からあったと思います。昔の日本人の巨石信仰と、当時のなにか良くない大きな出来事を鬼にかえ、出来上がったお話のように思われます。

おわりに

もっと簡潔にまとめられるはずでしたが、全然でした。まだまだ、続きます。

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